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Science Advances · Research Article

Bone marrow storage and delayed consumption at Middle Pleistocene Qesem Cave, Israel (420 to 200 ka)

Blasco, R., Rosell, J., Arilla, M., Margalida, A., Villalba, D., Gopher, A., & Barkai, R. (2019). Science Advances, 5(10), eaav9822. doi:10.1126/sciadv.aav9822

骨髄は、あとで食べるために保存された?

屋内、秋の屋外、春の屋外で保存した骨髄割合の経時変化を示す原著図4
原著論文 Fig. 4 より 季節・環境別に示した、中足骨に含まれる骨髄割合の経時変化。原著を確認 ↗

骨髄は、動物を仕留めたその日に食べきるしかなかったのでしょうか。イスラエルの洞窟に残った骨と、現代の保存実験から見えてきたのは、食べるタイミングを後にずらす工夫です。

「骨に残る加工痕は、骨髄を取り出すまでの時間について何を教えてくれる?」

まず、研究の舞台から

Qesem(ケセム)洞窟は、現在のイスラエルにある遺跡です。研究が対象にした時代は約42万〜20万年前。ここでいう「ka」は「千年前」という意味なので、420 ka は42万年前を指します。洞窟からは、火を使った跡や石器、動物の骨が見つかっています。

研究者が注目したのは、シカの足首から先にある細長い骨です。専門用語では中足骨と呼ばれます。中は空洞で、そこに骨髄が入っています。骨髄は肉のように外にむき出しではなく、硬い骨に包まれています。骨をすぐ割らずに置いておけば、肉を食べたあとでも中の脂肪を利用できるかもしれません。

骨髄は、ただの「骨の中身」ではありません。この研究で分析したシカの骨髄は、乾燥物の多くが脂肪でした。脂肪は少ない量でも多くのエネルギーを蓄えられます。狩りの成果をその場で全部食べるのではなく、あとで使える形で残せたなら、食料が手に入りにくい時期を乗り切る助けになった可能性があります。

この記事で見るポイント遺跡の骨に残る痕跡季節別の保存実験9週間という結果の意味

骨髄を骨の中に残して、時間を置く

「骨に入ったままなら、どれくらい保つのか」。研究チームは現代のアカシカの中足骨を使い、秋の屋外、春の屋外、屋内に近い環境の3条件で保存しました。週ごとに骨を調べ、骨髄の量や脂肪の状態を分析。別の骨では、皮や腱を取り除き、石器に似た石片で骨を割る作業を行いました。

この実験には二つの目的があります。一つは「中の骨髄が時間とともにどう変わるか」を測ること。もう一つは「時間がたってから皮をはがし、骨を割ると、どんな傷が残るか」を記録することです。洞窟の骨に残る傷を実験と比べれば、食べるまでに時間が空いたかを推理できるかもしれません。

たとえば新しい皮は骨からはがしやすい一方、乾いた皮や腱は骨に張り付き、はがすのに手間がかかります。そのため、道具の傷の数や向きが変わることがあります。研究者は傷を拡大して観察し、いつ皮をはがしたときの傷に近いかを比べました。傷の形を「昔の行動を読む手がかり」にするわけです。

屋外実験では37本のアカシカの中足骨を使い、273個の骨片を調べました。秋の屋外の平均気温は約13.3℃、春は約18.3℃。屋内条件はイスラエルの気候に近づけた約20.2℃の環境です。動物も環境も現代のものなので、昔の洞窟を完全に再現したわけではありません。それでも、季節を変えて比べることで「保存には気温や湿度が関わる」という点を確かめられます。

  • 骨は皮付きのまま置き、毎週状態を記録
  • 別の骨は石片で皮をはがし、石で割って骨髄を取り出す
  • 骨髄の量・脂質の変化と、骨表面の傷を別々に調べる
Qesem洞窟と実験の中足骨の切り傷の種類や位置を比べた原著図2
原著論文 Fig. 2 より 遺跡の骨と保存実験の骨に残った切り傷の種類・向き・位置の比較。原著を確認 ↗
Qesem洞窟の骨と保存実験で生じた骨の加工痕を示す原著図3
原著論文 Fig. 3 より 遺跡資料と保存実験の骨に見られる加工痕。写真・3D画像:R. Blasco。原著を確認 ↗

研究では遺跡の骨に見られる痕跡を、保存実験でできた痕跡と照合します。以下は、保管週数と骨髄量の変化を季節・環境別に示した原著のグラフです。

9週間を左右したのは、季節

秋の屋外条件では、骨髄の脂質は9週目まで比較的よく保たれました。春の屋外や屋内では変化が異なり、劣化は週ごとに進み、とくに3週目以降に目立ちました。骨が外側を覆うことに加え、気温などの環境も保存性を左右します。

図の縦軸は、骨の中に残った骨髄の割合。横軸は保存した週数です。秋の屋外では、0週から9週まで線がほぼ横ばいで、統計的にもはっきりした減少とは言えませんでした。一方、春の屋外では週ごとに低下し、屋内条件でも減少が見られました。「骨に入れておけば、いつでも9週間安全」という結果ではなく、季節や環境で差が出ています。

また、研究が調べたのは主に骨髄の量や脂肪の状態です。これは、現代の食品衛生の基準で保存肉の安全性を試験した研究ではありません。古代の洞窟で実際に何度保存したかを直接観察したものでもありません。ここでの9週間は、特定の場所と季節で行った実験の結果です。

この結果から、どこまで言える?

では洞窟の骨は何を示すのでしょう。Qesem洞窟の中足骨には、肉をすぐに取り除いたときよりも、皮や腱が乾いて骨に張り付いたあとで処理したときに似た傷がありました。実験では、保存を始めて少なくとも数週間たつと、皮をはがす道具の傷に変化が現れました。研究チームはこの似かたから、骨をしばらく置いてから骨髄を取り出した可能性を考えました。

実際、洞窟の中足骨では、皮や腱をはがした傷の約78%が、骨の前後の面に集まっていました。実験で皮が乾いてから取り除いた骨にも、似た場所と向きの傷が現れました。研究者は「骨をすぐ割ったのではなく、まず置き、あとから皮をはがしたのでは」と推定します。ここがこの論文の中心的な手がかりです。

考古学では、こうした「ものに残った跡から、起きた行動を推理する」方法がよく使われます。ただし傷の形が似ていても、別の行動が同じ傷を作る場合があります。これを「同じ結果に複数の原因がありうる」と考え、他の証拠も合わせて判断します。この論文でも、骨の傷だけで断定せず、保存実験、骨の分布、洞窟の環境を組み合わせています。

この研究が面白いのは、古代の人々を「獲物を見つけたらその場で食べるだけ」と考えなくてよい点です。骨を保管してあとで開くという、時間をまたいだ食料管理をしていた可能性が見えてきます。動物の体を、肉・脂肪・骨髄までむだなく使う工夫があったのかもしれません。

原著論文
Blasco R. et al. (2019). Science Advances, 5(10), eaav9822.
doi:10.1126/sciadv.aav9822 · 全文(PMC)

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Annals of Internal Medicine · Randomized Controlled Trial

A low-carbohydrate, ketogenic diet versus a low-fat diet to treat obesity and hyperlipidemia: A randomized, controlled trial

Yancy, W. S., Jr., Olsen, M. K., Guyton, J. R., Bakst, R. P., & Westman, E. C. (2004). Annals of Internal Medicine, 140(10), 769–777. doi:10.7326/0003-4819-140-10-200405180-00006

体重はどちらでより減った?24週間の食事比較

低脂肪群と低糖質ケトン食群の推定平均体重を24週間追った原著図2
原著論文 Fig. 2 より 低脂肪群(四角)と低糖質ケトン食群(丸)の推定平均体重の推移。原著を確認 ↗

低糖質ケトン食と低脂肪食。どちらが体重や血中脂質に大きな変化をもたらすのか。120人を対象にした24週間の無作為化比較試験を見ていきます。

数字ははっきり見える。でも、この試験が答えている問いはどこまで?

試験の設計を整理する

この試験には、肥満があり、血液中の脂質にも課題があった成人120人が参加しました。研究者は参加者をくじ引きのように二つのグループへ分け、一方には低糖質のケトン食、もう一方には脂肪とカロリーを抑える食事をしてもらいました。こうして偶然に分けると、もともとの体質や生活習慣の違いが、結果に影響しにくくなります。

低糖質グループは、最初は炭水化物を1日20グラム未満にする計画でした。ご飯やパンなどに含まれる炭水化物を大きく減らす量です。低脂肪グループは、食事の脂肪を全体のエネルギーの30%未満にし、コレステロールも1日300ミリグラム未満に抑え、食べる量も減らす計画でした。両グループとも、運動について助言を受け、参加者が集まる定期的なグループミーティングに参加しました。それに加えて、低糖質グループには栄養補助食品も用意されました。

つまり、比べたのは「炭水化物の量」だけではありません。食事のルール、カロリーの考え方、補助食品、続けやすさも結果に関わります。研究は食事プログラム全体を比べたもので、一つの栄養素だけの作用を完全に切り分けた実験ではありません。

この試験が見た指標24週の体重変化中性脂肪・HDL・LDL継続率と有害事象

体重変化は低糖質群で大きかった

24週、つまり約6か月後の平均体重減少は、低糖質グループで12.9%、低脂肪グループで6.7%でした。たとえば開始時に100キロだった人の平均に置き換えると、約12.9キロと約6.7キロの減少に相当します。実際の参加者が全員この通りに減ったという意味ではなく、グループ平均です。

最後まで試験を続けた人の割合は、低糖質グループが76%、低脂肪グループが57%でした。食事は、紙の上で効果があるだけでなく、続けられるかも大切です。一方で、途中でやめた人がいると、最後まで残った人だけの結果は参加者全体を代表しにくくなることがあります。研究者は、体重の変化だけでなく、継続率も一緒に見る必要があります。

  • 参加者全体の平均では、低糖質群の減少が大きい
  • ただし、最後まで続けた人は低糖質群でも約4人に3人
  • 一人ずつの変化には幅があり、全員が同じように減ったわけではない
低脂肪群と低糖質ケトン食群それぞれの参加者の体重変化を個人別に示す原著図3
原著論文 Fig. 3 より 線1本が参加者1人の体重推移。オレンジ線は各グループの平均を示し、下段は各時点で測定できた人数です。個人差と途中離脱も読み取れます。原著を確認 ↗

原著図でも両群とも体重が減り、低糖質ケトン食群でより大きな減少が続いています。論文が報告した24週時点の平均変化は、開始時体重に対して−12.9%と−6.7%でした(P<0.001)。

脂質指標は、すべて同じ方向ではない

血液検査では、中性脂肪は低糖質グループでより大きく下がり、HDLコレステロールはより大きく上がりました。中性脂肪は血液中の脂肪の一種です。HDLは「善玉」と呼ばれることがありますが、数字一つだけで健康全体が決まるわけではありません。

LDLコレステロールについては、二つのグループの変化に統計的な差が確認されませんでした。つまりこの試験から「低糖質ならLDLも必ず下がる」とは言えません。低糖質食を考えるときは体重や中性脂肪だけでなく、LDLを含む複数の検査値と本人の病気・薬を医療者と一緒に見ることが大切です。

低糖質グループでは、便秘、口の渇きなどの軽い不調も、比較グループより多く報告されました。食事を大きく変えると、良い変化だけでなく困る変化も起こりえます。研究では何が起きたかを記録し、効果と負担の両方を比べます。

体重だけではなく、体の中身も測っています。24週間で減った脂肪の平均は、低糖質群9.4kg、低脂肪群4.8kg。体脂肪以外の重さ(筋肉や水分など)の減少は、それぞれ3.3kgと2.4kgでした。体重計の数字は、脂肪だけでなく水分でも動くため、体重の変化をそのまま「脂肪が減った量」と読み替えないことが大切です。

尿に出るケトン体を目安にすると、低糖質群でケトン体が確認された人は2週目の86%から、24週目には42%に減っていました。最初の目標を全員が半年間ずっと同じ強さで続けたわけではありません。研究名に「ケトン食」とあっても、実際に続けられた食事は人によって違います。

中性脂肪より大きく低下
HDLより大きく上昇
LDL有意差なし

研究者の結論と、読み手の注意点

まとめると、この試験では、参加した人たちの平均で、低糖質プログラムのほうが6か月後の体重減少が大きく、中性脂肪とHDLにも有利な変化が見られました。これは「この参加者、この期間、この二つのプログラムを比べた結果」です。

研究から分からないこともあります。24週間より先も差が続くのか、糖尿病や心臓病の発症を減らすのか、健康な人や別の年齢層でも同じかは、この試験だけでは答えられません。低糖質グループだけに補助食品があったことも、食事だけの効果を判断しにくくします。

そして「低糖質ケトン食」と「カーニボア食」は同じものではありません。この試験は動物性食品だけの食事を調べていません。肉食を支持する議論に使うときも、研究が実際に試した食事を正確に呼び分けることが、エビデンスを誠実に読む第一歩です。

原著論文
Yancy W. S. et al. (2004). Annals of Internal Medicine, 140(10), 769–777.
doi:10.7326/0003-4819-140-10-200405180-00006 · 抄録(PubMed)

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